選択的夫婦別姓めも~日弁連案からどう落ち着くか予測~

夫婦別姓制度「一般の方々が十分理解されていない部分もある」衆院選一夜明け岸田総理が会見で語る

[選択的夫婦別氏制度については、実際困っている方、必要とされている方がおられますので、議論は進めていくべきだと思っています。

しかしながらこうした制度は社会全体として受け入れる制度であるからして、国民の幅広い理解が伴わなければならない。私自身地域、あるいは地元で色々対話をする中で、この制度についての理解、一般の方々が十分理解されていない部分もあるのではないかという点も感じております。ぜひ国民の理解ということについても政治の立場から汗をかいて議論を進めていくことが大事ではないかと思っています。]

と総理大臣。

 

夫婦別姓「賛成寄り」の当選者55%、自民は24% 朝日東大調査 [2021衆院選]:朝日新聞デジタル

[選択的夫婦別姓は、全体で賛成寄りが55%(17年41%)を占めた。]

と有料記事なので読めないが、自民でも「賛成寄り」が増えたと。

 

[同性婚の法制化について賛否を聞いた。全体ではいずれも「賛成寄り」が多数]

 

同性婚も50%超えてるんだか。そっちは憲法改正がいる気もするが、まあ「両性」というのを同性婚を排除しているわけではない、と解釈するならいけるか。

 

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自民党というのは「空気」を読む政党だ。だからガースーも大きなミスはないのに辞めて、それで甘利もさっさと交代となったと。

個人的な予測でしかないが、次の衆議院(~2025年)までには公明党の提案を飲むような形で、選択的夫婦別姓は実現するんじゃないかと思う。来年はまだ無理としても、再来年2023年とか? 来年は7月に参議院選があるから、そこでまだ保守層を切りたくないということもあるだろう。施行が2025年とか20年代後半くらいになるか。

 

で、と。

1.旧称明記だとまだ不便・不十分で事実婚を選択する夫婦がいる、そこで困っている。

という論点についてはあまり賛成派も強いことが言えていない。

2.夫婦別姓ではなく家族別姓になる

ここのほうが最近は言われている気がする。

 

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選択的夫婦別姓、自民党内で賛否の綱引き 公明党代表は実現を要求 - 産経ニュース

 

[ただ、子供の姓をどちらにするのかで家庭内に混乱や対立を招きかねないなどの懸念は少なくない。自民党有志による議員連盟「『絆』を紡ぐ会」を立ち上げた高市早苗総務相ら慎重派は、旧姓の通称使用拡大を求める提言を近く党幹部や政府に申し入れる方針。]

 

夫婦別姓は、導入されるか? | 特集記事 | NHK政治マガジン

[また、夫婦の姓が違うと、子どもにとって「好ましくない影響があると思う」と答えた人は62.6%で、「ないと思う」の32.4%のおよそ2倍となっている。]

 

毎日新聞社に抗議します。夫婦別姓ではありません | 大和の国から 平成15年11月~平成17年8月 | コラム | 高市早苗(たかいちさなえ)

[将来の選挙に「山本」で出るか「高市」で出るかということは、「戸籍上は同姓の夫婦が仕事上、『通称』を使うかどうか」という議論であって、私は現行法上でも可能な「通称使用」まで否定したことは1度もありません。]

と2004年から高市早苗は変わらないと。

 

高市早苗氏が「クタバレ夫婦別姓」で語っていたこと。反対し続ける理由とは?(BuzzFeed Japan) - Yahoo!ニュース

[最近では、『正論』(2021年6月号)の特集でも、「子の氏の安定性が損なわれる可能性がある」「世の中の制度に統一性がなくなり、第三者の苦労は大変なことになる」と述べており、主張に変化がないことがわかる。]

[野党案の選択的夫婦別姓には「残念ながら反対」であると、以下のように理由を語った。

「氏を決めるときに、夫婦で取り合って、どっちにするか決まらないときに、家庭裁判所の審判で決めるということになっているので、せっかく子どもさんが生まれて幸せいっぱいのときに家庭裁判所で争うというのも、ちょっとこれは残念な気がします」]

 

というところで、旧姓使用で良いだろう、というのが高市早苗という「保守」だが、でも20年前なら旧姓自体でもより右から批判されていたというところ。

 

【前編】拝啓 高市早苗議員。自民党総裁選出馬の前に、国民に説明しなければいけないことがあるのではないでしょうか? | 選択的夫婦別姓・全国陳情アクション

これは高市批判。

 

 

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で、子供の姓。

 

あなたの声で国会を動かすために。選択的夫婦別姓「陳情Q&A」 | 選択的夫婦別姓・全国陳情アクション

[子どもの姓はどうなるの?
1996年(平成8年)にあった法制審議会の答申では、「子どもは結婚時に決めた筆頭者の名前で統一される」と決まっていました。

結婚時に筆頭者が決まるので、その時点で子どもの姓も決まります。いま現在と、決め方もタイミングも全く同じです。
公明党や野党案では、子どもが生まれるたびにどちらの姓にするかを決めるという案です。(関係法令の改正点が増える)]

 

公明党の案

衆法 第151回国会 54 民法の一部を改正する法律案

[1 嫡出である子は、父母の氏(子の出生前に父母が離婚したときは、離婚の際における父母の氏)又はその出生の際に父母の協議で定める父若しくは母の氏を称するものとする。(第1項関係)
2 1の協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所は、父又は母の請求により、協議に代わる審判をすることができるものとする。(第2項関係)]

 

野党案はこんなところ。

選択的夫婦別姓導入実現へ。野党5党1会派、民法改正案を衆院に提出 - 旧・国民民主党 (2018年5月〜2020年9月)

[第七百九十条 嫡出である子は、父母の氏(子の出生前に父母が離婚したときは、離婚の際における父母の氏)又はその出生の際に父母の協議で定める父若しくは母の氏を称する

前項の協議が調わないとき、又は協議をすることができないとき(次項及び第四項の場合を除く。)は、家庭裁判所は、父又は母の請求によって、協議に代わる審判をすることができる。]

 

1.父母の氏が同一ならその氏になる。

2.別姓の場合「出生の際に父母の協議で定める」

で、

3.協議が調わないときは、家庭裁判所

だと。

 

 

まあ、野党案と公明党案は、どちらも日弁連案ということでもあるのか。

日本弁護士連合会:選択的夫婦別姓制導入並びに非嫡出子差別撤廃の民法改正に関する決議

[(6) 別姓夫婦の子の姓は、出生の際、父母が協議して定めるものとすべきである。


民法改正要綱は、子の姓を統一することとし、婚姻の際に夫または妻の姓を子の姓として定めなければならない、としている。しかし、婚姻後、子を持つか否か、持つとしても何人持つかなどは、それぞれの夫婦のライフスタイルの問題であり、それを予め届けさせるような方法は採用すべきでない。


子の姓は、子の出生時の事情に応じて、父母がその都度協議して自律的に定めるのが、最も合理的である。夫婦の協議が調わない場合または協議をすることができない場合は、家庭裁判所の審判で定めるものとすべきである。]

これが96年で法制審議会の対案ってところか。

 

法制審議会の法案ってこれかな

法務省:民法の一部を改正する法律案要綱

[平成八年二月二十六日 (中略)

第三 夫婦の氏
     一     夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫若しくは妻の氏を称し、又は各自の婚姻前の氏を称するものとする。
     二     夫婦が各自の婚姻前の氏を称する旨の定めをするときは、夫婦は、婚姻の際に、夫又は妻の氏を子が称する氏として定めなければならないものとする。]

 

法務省:FAQ(よくある質問)

[Q8 別氏夫婦を認めたときの子どもの氏は,どうなるのですか。

 いろいろな考え方がありますが,平成8年の法制審議会の答申では,婚姻の際に,あらかじめ子どもが名乗るべき氏を決めておくという考え方が採用されており,子どもが複数いるときは,子どもは全員同じ氏を名乗ることとされています。]

 

つまり婚姻届けに、夫婦別姓の場合は子供の姓をどっちにするか記載すると。

 

例外的に夫婦の別姓を実現させる会 - Wikipedia

例外的夫婦別姓、というのもあると。まあ、デフォルトは同姓で、例外的に別姓も可能、という建付けだがあまり議論が広がっていない感じはある。実質は同じだし。

 

法制審議会案と日弁連案の議論というのも96年から平行線なのかもなあ。

 

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それで、と

夫婦別姓とLGBT法案で岸田氏孤立? 公明からも「自民は合意を」 [2021衆院選]:朝日新聞デジタル

 

[岸田氏は「この問題は社会全体で受け入れる問題だ。私も地元で車座になって多くの皆さんとの意見交換をする中で、選択的夫婦別姓の問題を取り上げることもある」と説明。「そういった際に、多くのお母さんから、子どもたちはばらばらの姓を選ぶのか、誰が選ぶのか、後で変えられるのかと疑問の声が出ている」とし、「引き続き議論していくことは重要」と述べた。]

 

と、総理大臣の言葉はそれなりに重みはある。

[多くのお母さんから、子どもたちはばらばらの姓を選ぶのか、誰が選ぶのか、後で変えられるのか]

 

ということで、子供の姓がどうなるか。わかりやすいのは法制審議会案だろう。

 

なんとなく高市早苗の「野党案に反対」というところは、法制審議会案(結婚時に子供の姓を決める)というのにはそこまで反対じゃない、という風にも聞こえる。憶測が強すぎるか?

岸田総理に不安を述べる「お母さん」に対しては「婚姻届けを出すときに決めるんです」で答えになる。

 

完全に予測でしかないのだが、最初はフルセットの日弁連案(=野党・公明党案)を公明が出すが、自民が渋って、法制審議会案の婚姻時に子供の姓を決める案を公明が出してそれで自民が妥協、ってシナリオがこの数年後に待ってるんじゃないか。

 

でも、この問題ってメディアで取り上げられることはあっても、そこまで票をとれるイシューじゃないことも今回わかったので、こういうリベラル寄りのカード(シナリオ)をどこで切るのかは、もしかしたら10年後とかもと先になるのかも。自民の支持率が下がったときかな。

 

*****追記

日経の有料記事(衆議院前)

選択的夫婦別姓、今度は進む? 自民だけ慎重: 日本経済新聞

SDGsジェンダー平等まわりで話題になっているのが今回盛り上がった理由だとか。野党が勝ったら子供の姓をどうするかという問題の議論を整理して、導入に向かうと書いてあったが、うーん。そんな未来もあったか。

しかし、「希望者向けにオプションを増やす」ということで同姓派に悪影響はない、とする言い回しに対しては、安楽死(+尊厳死)という同じく四半世紀議論が膠着している問題があるなーと、なんとなく思い出した。