政治家(権力者)のセクハラ事例として横山ノック事件~橋本聖子と高橋大輔の説明に納得がいかない理由~
1999年というと、もう15年も前の話になるか。最近のような気もするし、ずいぶん前のような気もするが、たぶん、政治家のセクハラ事件としては最大のものが、当時の大阪府知事・横山ノックの事件なのだろう。
Wikipediaの記事からまとめると、選挙カーでウグイス嬢(名前を連呼する女の人)に無理やりわいせつ行為としたというので、民事訴訟では1000万円以上の損害賠償、刑事では強制わいせつ罪で懲役1年6か月・執行猶予3年となり、知事辞職、芸能界追放(元タレント)、と一気に転落。色々と話題になった事件だ。
この事件については、ちょっとうろ覚えだが、「たかがそれくらいで」「怪しい」「相手の家族や地位のことを考えろ」「金目当てだ」と被害者女性を非難する声というのが結構あったと思う。「許してあげなさいよ」とかもあったか。
現に、横山ノックは政治生命、芸能界生命を失って、罰としては相当重いものを食らったわけだが、女性の強制わいせつという被害に対して彼の受けた罰は釣り合うか、というと・・・、という考え方ではなく、「人権」ということは何よりも優先される、というのがここの裁判で示されたものだと思う。
民事で判決が出た後に、刑事事件として送検されたというあたり、女性からの警察への被害届けは相手にされなかった、ということになる。このあたりはフェミニストが散々話題にしただろうと思う。日本の警察官僚は女性の性的被害を軽視している、とかいった感じかな。
「人権」というと、あまり連呼するとうさんくさく聞こえる言葉になってきている気もするが、もう少し噛み砕くと「人間としての尊厳」とか、「プライベートな部分への不可侵性」とかいったことになるだろう。で、この事件よりも前では、
「そんな大げさに騒ぐことかよ、ちょっと触られたことだろう」
くらいの認識だったのが(警察なり、社会なり)
「人間としての尊厳の破壊」「心的外傷(トラウマ)の原因」「精神の殺人者」
といったことになった。
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とはいえ、性の問題の難しいのは、同じような行為をされたのであっても、相手によって快楽にもなり、逆に、深刻な心的外傷にもなるというところで、つまり、「被害者」側の声しだいで、それは犯罪にもなるし、合意の行為にもなる。そこが「加害者」側としては怖いところ。
性的な誘い(2)~立場の絡まないナンパ程度はOK : ジョブサーチ : 読売新聞(YOMIURI ONLINE)
(「日本システムワープ事件」東京地裁H16.9.10判決)
取引先の女性に対して、口頭で1回、メールで2回お茶の誘いをした男性が、セクハラということで懲戒解雇されたが解雇無効を訴えて認められた事件だが、「被害者」側の女性が「加害者 」側の男性に好意を持っていたとしたら、また別のストーリーとなっていただろう。
(自分でちゃんと断れ、とは思うが別にこの事件の女性は悪くない。会社の過敏な反応が問題)
つまり、「被害者」側の意思が一番重要な問題なのだ。となると、もっと重い性的な事案で、「加害者」側が、「被害者」側に対して、
「あれは合意の上だっただろう?」
という話にしてもらおうとする、という事例も出てくる。というか、「加害者」側の常套句だ。
そこで、トラブルを避けるために泣き寝入りする人もいるだろうし、最初の横山ノック事件の被害者のように訴える人もいる。裁判に行く前に金で解決、というのもある。あとは、なんらかの便宜を図られるとかか。
というわけで、橋本聖子と高橋大輔の説明に納得がいかない理由でした。