会田誠問題と天皇コラージュ事件~雑感

— 2015年7月25日

まず軽く抜粋

 

 まずこの作品は、見た目の印象に反して、いわゆる「政治的な作品」ではありません。現在の政権や特定の政党を、利する/害するような文言は一言も書いてありません。文部科学省という役所全体に対して、不平不満を述べているだけです。公立ではなく民間の場であっても、芸術を使って政治的アピールはすべきでない、というのは僕のいつもの基本方針です。

次に「内容が子供展に相応しくない」という意見に反論します。
   ここに書かれているのは日本国の教育制度に関する話——いわば「大人の事情」ですが、そのようなものを子供たちの目から意図的に遠ざけ隠す行為は、基本的に良くないことだと僕は考えます。

(中略)「ものごとを疑う精神」というのは、人間の知性にとって最も大切なものと僕は考えます。

「最後に「クレーム」について。
   7月24日の話し合いの時に長谷川、加藤両氏から「観客からのクレームがあり、東京都庁のしかるべき部署からも要請がきたので、美術館としても協議し、撤去の要請を決定しました」と、僕は言い渡されました。
 (中略)返答は「友の会会員が一名」というものでした。」

 

1.政治的な主張の作品ではない。

2.内容はむしろ適切だ。

3.クレーム1件でこれは過剰反応だ。

 といったところ。

 

 まあ、わからなくはないのだが、1.政治的な主張の作品ではない、という本人の主張は無理がある気もする。行政批判であって、政治(=政党)批判ではない、というロジックだが、そうは言っても行政府の長は内閣総理大臣文部科学大臣なわけで、何の政治性もないわけではないだろう。

  それにこういうの描いてて、政治性がないって何言ってるんだか。

 

 2.内容は子供に不適切どころか適切だ、というのは面白い主張だと思うし、個人的には好きだが、まあ、アーティストの言うことだな、という印象でもあるか。

 3.クレーム1件は過剰反応、というのはそういう気もするが、ちょっとこのあたりの事情がよくわからない。

 何百人、何千人と客がいて、そのうち1人がクレームを出したということでほぼゼロと見ることもできるにしろ、暗数としてクレームを出さないにしろ不適切だと考えた客が結構いたとか? というか、こういった展覧会でクレームというのがどの程度出るものなのかが不明。

 もし、基本はクレームなしで、数年ぶりなり、数十年ぶりに来たクレームだというのなら、結構な大事件だ、という見方もある。

 

kotobank.jp

 

 判例百選にも載ってるが、天皇コラージュ事件というのがある。表現の自由、というところと、閲覧の自由・知る権利、というところで争われた。

 「表現の自由」のところでは、門前払いに近い。別に、公立の美術館以外にも発表する場はいくらでもあるのだ。

 「知る権利」というところでは、地裁では認められたが、高裁では認めず、美術館長や県の「広範な裁量」を認めた、とかいったところ。

 

 作家側からすれば、こういうのは「表現の抑制」につながる、と。

 

****************

 

 まあ、撤去撤回になるかもしれないし、このまま撤去で忘れられていく、ってところかもしれない。

 まあ、なんとなくだが、あまり擁護の声は出ないんじゃないかな、という印象。 

 

※ というか撤去されてなかったのか。撤去要請、というくらい。勘違いでした。