会田誠問題と天皇コラージュ事件~雑感
まず軽く抜粋
「 まずこの作品は、見た目の印象に反して、いわゆる「政治的な作品」ではありません。現在の政権や特定の政党を、利する/害するような文言は一言も書いてありません。文部科学省という役所全体に対して、不平不満を述べているだけです。公立ではなく民間の場であっても、芸術を使って政治的アピールはすべきでない、というのは僕のいつもの基本方針です。」
「次に「内容が子供展に相応しくない」という意見に反論します。
ここに書かれているのは日本国の教育制度に関する話——いわば「大人の事情」ですが、そのようなものを子供たちの目から意図的に遠ざけ隠す行為は、基本的に良くないことだと僕は考えます。
(中略)「ものごとを疑う精神」というのは、人間の知性にとって最も大切なものと僕は考えます。」
「最後に「クレーム」について。
7月24日の話し合いの時に長谷川、加藤両氏から「観客からのクレームがあり、東京都庁のしかるべき部署からも要請がきたので、美術館としても協議し、撤去の要請を決定しました」と、僕は言い渡されました。
(中略)返答は「友の会会員が一名」というものでした。」
1.政治的な主張の作品ではない。
2.内容はむしろ適切だ。
3.クレーム1件でこれは過剰反応だ。
といったところ。
まあ、わからなくはないのだが、1.政治的な主張の作品ではない、という本人の主張は無理がある気もする。行政批判であって、政治(=政党)批判ではない、というロジックだが、そうは言っても行政府の長は内閣総理大臣や文部科学大臣なわけで、何の政治性もないわけではないだろう。
天ぷらで思い出しました。「食用人造少女・美味ちゃん」シリーズの番外編として、当時の首相に良く似たお客さんの絵を描いたんだった。 pic.twitter.com/vPXQpkduO6
— 会田誠 (@makotoaida) 2014, 2月 18
それにこういうの描いてて、政治性がないって何言ってるんだか。
2.内容は子供に不適切どころか適切だ、というのは面白い主張だと思うし、個人的には好きだが、まあ、アーティストの言うことだな、という印象でもあるか。
3.クレーム1件は過剰反応、というのはそういう気もするが、ちょっとこのあたりの事情がよくわからない。
何百人、何千人と客がいて、そのうち1人がクレームを出したということでほぼゼロと見ることもできるにしろ、暗数としてクレームを出さないにしろ不適切だと考えた客が結構いたとか? というか、こういった展覧会でクレームというのがどの程度出るものなのかが不明。
もし、基本はクレームなしで、数年ぶりなり、数十年ぶりに来たクレームだというのなら、結構な大事件だ、という見方もある。
判例百選にも載ってるが、天皇コラージュ事件というのがある。表現の自由、というところと、閲覧の自由・知る権利、というところで争われた。
「表現の自由」のところでは、門前払いに近い。別に、公立の美術館以外にも発表する場はいくらでもあるのだ。
「知る権利」というところでは、地裁では認められたが、高裁では認めず、美術館長や県の「広範な裁量」を認めた、とかいったところ。
作家側からすれば、こういうのは「表現の抑制」につながる、と。
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まあ、撤去撤回になるかもしれないし、このまま撤去で忘れられていく、ってところかもしれない。
まあ、なんとなくだが、あまり擁護の声は出ないんじゃないかな、という印象。
※ というか撤去されてなかったのか。撤去要請、というくらい。勘違いでした。