名誉毀損メモ~民事と刑事

www.sankei.com

 「東京電力福島第1原発事故の政府対応をめぐり、安倍晋三首相が発行したメールマガジンの記事で嘘を書かれ名誉を毀損(きそん)されたとして、菅直人元首相が安倍首相に謝罪記事の掲載や約1100万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が3日、東京地裁であった。永谷典雄裁判長は「記事は菅氏の資質や政治責任を追及するもので、公益性があった」とし、菅氏の訴えを退けた。」

 

菅直人 - Wikipedia

 

 メルマガは2011年5月。提訴自体は2013年の7月、自民党への政権交代後だ。それで地裁の判決が出たのが2015年12月3日、と。

 内容自体の正否は置いておくとして、野党の政治家が総理大臣をメルマガで批判したのを、数年後に立場が逆転してから訴えるというのは、その行為自体に批判があったっけ。まあ公益性はあったというところか。国会議員に対する政治責任を問う内容だったわけだ。

 

 名誉毀損は刑法でもある。

 

第230条
  1. 公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金に処する。
  2. 死者の名誉を毀損した者は、虚偽の事実を摘示することによってした場合でなければ、罰しない。 
第230条の2
  1. 前条第1項の行為が公共の利害に関する事実に係り、かつ、その目的が専ら公益を図ることにあったと認める場合には、事実の真否を判断し、真実であることの証明があったときは、これを罰しない。
  2. 前項の規定の適用については、公訴が提起されるに至っていない人の犯罪行為に関する事実は、公共の利害に関する事実とみなす。
  3. 前条第1項の行為が公務員又は公選による公務員の候補者に関する事実に係る場合には、事実の真否を判断し、真実であることの証明があったときは、これを罰しない。

刑法第230条 - Wikibooks

 

 刑法だと、名誉を毀損したものは3年以下の懲役か罰金、となっているが名誉毀損罪で逮捕、実刑判決、というのはそんなにニュースで見ない。また、判例集での解説になるが、「真実であることの証明があったときはこれを罰しない」という条文は、実際の運用上は「信じるに足る状況であった場合」は無罪になる。今回の訴訟の、海水うんぬんの部分も「事実」かどうかにプラスして、当時は事実だと考えられていた部分がある、という点が重視されたと。民事だけど、判断の部分は同じだろう。

 

民法だと。

 

 第710条

他人の身体、自由若しくは名誉を侵害した場合又は他人の財産権を侵害した場合のいずれであるかを問わず、前条の規定により損害賠償の責任を負う者は、財産以外の損害に対しても、その賠償をしなければならない。

民法第710条 - Wikibooks

第723条

他人の名誉を毀損した者に対しては、裁判所は、被害者の請求により、損害賠償に代えて、又は損害賠償とともに、名誉を回復するのに適当な処分を命ずることができる。

民法第723条 - Wikibooks

 

という条文。どうも、刑事訴訟に持ち込むのはハードルが高いが(検察が判断するため)、民事訴訟に持ち込むのは行きやすい、というので民事での名誉毀損裁判というのは多いと。損害賠償請求という形になる。刑事では親告罪だが、よっぽど悪質でないと検察は動かないとかなんとか。

 

xn--2ch-5q0fn79k.net

 

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刑事訴訟と民事訴訟の違い~名誉毀損編|Hornozaurusのブログ



追加

http://www.sankei.com/smp/affairs/news/151217/afr1512170041-s.html

韓国大統領に対する名誉棄損訴訟は無事に無罪。刑事事件なので、検察が起訴する形になるが、そういう検察の行為自体が批判の的となった。アメリカも文句言ってたか。

しかし、日本だと3年以下の懲役が、韓国だと7年以下と厳しいな。