白馬岳6人遭難(2012年)はどうもすっきりしない

 2012年5月、ゴールデンウィーク終わりごろに起こった白馬岳の遭難事故。パーティの6人全員が死亡というのが、遭難事故としては大規模だし、1人も生き残らなかったというのも珍しいということだ。

 初報では「全員が軽装」とされるが、数日後の続報ではリュックサックの中には防寒具があったとのこと。急な天候の変化で、身につけることができなかったのだろう、というのが大筋の見方だ。

 

 90年代くらいに「百名山ブーム」が起こるが、そのころの代表的な遭難事故というと、立山中高年大量遭難事故(1989年10月)がある。

 それ以前はマナスル登頂(1956年)からのブームで、わりと若い人か、若いころから山登りをしている人に限定されていたのが、中高年になってから山登りを始める、という動きが出てきたのが「百名山ブーム」だ。で、89年の事故は文字通り「軽装」で、3000メートル級の山を登るには不十分な「装備」で、経験の不十分な人間の集まりが悪天候により遭難、ということだった。

 

 それから13年。山ガールブームーーこれは、潜在的に登山なりアウトドアに興味のある若い女性はいたが、「ださい」ということで敬遠されていたのが掘り起こされた、という理解でいいと思うがーーがあったり、「装備」の軽量化が進んだわけだが、白馬岳の遭難にしろトムラウシにしろ、中高年、というか高齢者の登山者が「軽装」というのは、わりと稀になってきたみたいだ。高齢者は金もあるわけだし。

 

 なので、2chの過去ログを読んでもニュースの初報のあたりから、色々と推理をしていく人はいて、「軽装」というのは違うんじゃないか、という意見は出ていた。

 その後、「軽装」ではなかったという続報が出て「名誉挽回になった」と遭難者の知人の書き込み(真偽は不明)が出たりする。大学時代から登山を続けてきた「ベテラン」も数人いたとか。1989年の遭難事故と同じ図式で理解するのは、間違いというわけだ。

 

 ただ、そうは言っても5月頭に3000M級の山に行くには「荷物が少なかったんじゃないか」という意見もあり、また、雪の積もった登山道を10時間歩く計画というのが無理があったんじゃないか、といった意見も出た。天候が荒れるという予報もちゃんと出ていた。

 まあ、全くの無謀というわけではないが、不測の事態に対応できるだけの力はない計画と装備、というところだったのだろう。初報の「軽装」というのも、着ていないのだから誤報というわけでもない。家に置いて持っていかないのも、リュックサックに入れっぱなしなのも、判断ミスということでは同じようなものだ。(低体温症で判断力が低下、というのもあるらしいが)

 

 どうもすっきりしないのは、トムラウシの遭難事故はちゃんと検証記事や報告書が揃っているのに対して、こちらの遭難事故は少しネットで探したくらいだと、あまり情報がないところ。(遺族への配慮もあるだろうが)

 あと、ずぶの素人の「軽装」と批判されるほどでもないが、ちゃんと重装備だった、完全な装備だった、というわけでもないあたり(ツエルトがちゃんと全員分ないとか)も微妙。 

 また、なぜか遭難者を擁護するような意見がネットで多い(ブログなど)というのも、すっきりしないところ。急な天候の変化に対応できなかったから不運だったんだ、うんぬん。

 

 死人に口なしなのだから、非難するのは間違い、という意見もわからなくはないが、罪を憎んで人を憎まず、というわけではないが、その愚かな行動を非難するなり、検証するなりすること自体は今後同じことを繰り返さないためにも必要だろう。特に登山者なら自信の安全のためにも。

 

 まあ、春山に対して少し甘く見ていた、典型的な気象遭難ということなのだろう。医者どうしの人間関係がうんぬん、と邪推する意見もあるが、集団で行動する問題というのもあったのかもしれない。

 なんにしろ、気象条件が怪しいなら、登山を中止するという判断力を持つことが必要なのだろう。

 

 ※雑誌「山と渓谷」で検証記事が出ているということだが、バックナンバーまでは探ってません。

※謹んでお悔やみを申し上げます。