プロの登山家といううさんくさい存在~イモトアヤコとの違いは順番だけ

 たとえば野球だが、プロとアマの違いというと何かというと、イチローのようにプレイしているところを観客に見せて金を稼ぐのがプロで、アマチュアは試合をしても金は稼げない。将棋にしろ、音楽にしろ、プロとアマというのはあると。

 

 ただ、芸術関係だと現代音楽だったり美術だったり、小説や現代詩だったり、それでいくらか金銭を稼いでいても、生活していくのに不十分だったりするので、美術なら美術教師、音楽は講師、文学は学校の先生なんかが多い、となっている。なので、そういう分野はあまりプロプロ言わないかもしれない。

 このあたり、メインカルチャーポップカルチャーでは少し違うかもしれなくて、プロのギタリスト、というのは言われる。プロの漫画家もそう。でも、プロのピアニスト、というとコンサートピアニストということだと世界に数人~数十人程度だが、子供に音楽教室でレッスンをするという人は多く、飲み屋や結婚式などイベントでピアノを弾く人を「プロ」とあえて呼んだりもしなかったりと、まあちょっと複雑。美術で生活費稼げてる人というのはどれだけいるのか不明だし(フェミ案件のろくでなし子ですね)。文芸については、商業誌への発表の有無ということだが。写真も似たような感じなのかな。

 

 マイナースポーツでも、相撲は「プロ」がいるが、柔道は「プロの柔道家」とアマチュア、という風に分かれるのではなく、警察や企業に所属しつつか、先生をやりながら、というオリンピック金メダリストがいる、と。ゴルフの場合だと、トーナメントに出るトーナメントプロと、コーチをするレッスンプロ、といると。

 

 で、登山家。それもプロの。

 

 ゴルフで言うところのレッスンプロというのはいる。登山ガイドというやつだ。それで収入をいる。うん、プロだ。インストラクターではあるのだけど。

 じゃあ、トーナメントプロのような存在はいるかというと、厳密にはいない。登山に賞金は出ないし、観客からお金を集めるのだってない。ただ、それでも「プロの登山家」と自称する人たちはいる。自称アーティスト(by警察発表)のろくでなし子と比べてみるとまたあれだが、そういう人はどうしているかというと、柔道やレスロングのように、企業に所属しながら競技メインで生活するような感じだったり、あとはスポンサーをつけて、ということらしい。

 

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 登山にいくらか興味を持って調べて、芸人のイモトアヤコがマナスルに登った、というところでひと悶着あったのを知った。まあ、簡単に言うとイモトは頂上まで行ったものの、そこからヘリで帰還したわけだが(計画通り)、それを登山の「プロ」の人が、批判したと。

 

 で、その人が、三浦雄一郎という最高齢でエベレストに登頂したものの途中でヘリで帰還(自分の足で帰れないのだから、実質、遭難だろう)という人に対しては賞賛の態度を取り、ダブルスタンダードだとネットでちょっと批判があがった、と。

 

 頂上からヘリ、という計画はまあどうかな、というのはあるにしろ、考え方によってはイモトアヤコは計画通りに登山してヘリで帰還、逆に、三浦雄一郎は遭難(計画遭難?)、という風に言えるかもしれない。

 計画遭難、というのは、始めからヘリを使う予定だったんじゃないか、ということだ。エベレストはよく知らないが、携帯電話の電波が通じるかというとないだろうし、あらかじめ無線などで連絡を取れるように連絡経路を確保して、かつ、ヘリも待機させていたとかなんじゃないか? 長野県みたいに、すぐに山岳救助隊がヘリで来てくれるわけもないだろうし、だから死者が多いわけだしね。だから、予定通りに遭難したという予定遭難。

 

 で、この三浦氏。エベレスト登山に1億5000万ほど使ったらしい。酸素ボンベを何十人も使って運ばせたりと、極地法という最近は評判の悪い登山のやり方で、大名登山、なんて批判もあるとか。スポンサーとしてはサントリーなどがついていたらしい。まあなるほど、彼はまさしくプロの登山家だ。

 

 ここで、テレビの企画で登山をするイモトアヤコと、「プロの登山家」の違いが、あいまいになってくる。

 

 順番は逆だ。「プロの登山家」は、山に登るためにスポンサーなどから金をかき集める。イモトアヤコは、スポンサーから金を集めるため(視聴率のため)に山に登る。

 この違いは、結局は順番でしかない。登山が目的か手段か、というところで人によっては、金(視聴率)のために山に登るなんて、と嫌悪感はあるかもしれない。でも、スポンサーからすれば宣伝効果から金を出すことに違いはない。そして、「プロの登山家」もイモトアヤコもやってることは違いがない。

 

 こう考えていくと、「プロの登山家」って何だろうな、と感じてしまうわけだ。最初は山に登るために金を集める、というはずだったのが、だんだんと順番が逆になってくることもあるんじゃないか、と。

 登山文化におけるフォークロアとしてよく語られる、マッキンリーで遭難死した植村直己なども、最後はそういったところもあるらしいとかないとか。

 

 ま、イモトがエベレスト行ったら面白いな~、と、「素人」の芸人が、「プロ」の登山家がなかなかできないことをやってのける、というのを自分としては面白く思ったりするというわけだ。